mathichenの酔いどれ日記【Hatena版】

~midnight dribbler~(ウサギ畑でつかまえて)

男たちの旅路に幸あれ

トーゴ代表選手はアフリカ・ネーションズカップ出場を決意

 トーゴ代表がアンゴラのカビンダで移動中に武装グループに射撃された事件で、9日、ユベール・ブリュド監督のアシスタントで、腹部を撃たれ重体だったアバロ・アメテレ氏が病院で命を落とした。また、重症を負っていたプレス担当広報のスタン・オクロー氏もその数時間後に亡くなった。一方、トーゴの首相は、最初亡くなったと報じられたチームバスの運転手は、重体だが亡くなっておらず、現在病院で治療中だという声明を発した。これが事実なら、死者は2人ということになる。
 ほかに、テクニカルディレクター、メディカルスタッフ、また腰を撃たれたGKオビラレも重体から脱していない。オビラレは、9日に南アフリカヨハネスブルクの病院に移され、緊急の集中治療を受けていることが確認されている。

 死者のニュースにショックを受けたトーゴ代表選手たちは、最初は明白に、アフリカ・ネーションズカップ(CAN)出場を取りやめる決意を見せていた。この凶報に先立ってBBCのインタビューを受けたエマヌエル・アデバヨルは「多くの選手がすぐにでも家族のもとに向かうためたちたがっている」と明かしていたが、9日の午後、グルノーブル松井大輔のチームメートであるアレクシー・ロマオも、フランスメディアに次のように語っていた。
「今、カビンダの空港でロメ(トーゴの首都)に帰るための飛行機を待っている。われわれは現在、同じグループの他の代表(ブルキナファソコートジボワール、ガーナ)と、彼らもまた大会をボイコットするよう説得するために話し合っているんだ」

 アストン・ビラのムスタファ・サリフも、クラブの公式サイト上に「われわれ選手たちは、自分たちの決断を下した。このような状況下でここに留まることはできない。われわれは、今日にもすぐ、家に帰りたいと願っている」という声明を出した。
 またナントのトーマス・ドスビは「われわれはショック状態にあり、プレーする気になれない。僕らは皆、なぜCANの試合がカビンダで行われるのかに疑問を感じている。なぜ大会を内紛戦争のある国で開催するなどということができるのだろうか」とコメントした。

 これを聞いたBBCなどは、早々に「トーゴ棄権」のニュースを流した。しかし続報によれば、選手の希望に反し、アンゴラの大会運営委員会は、予定通り大会に出場するようトーゴ代表にプレッシャーをかけたらしく、一時決定的に見えていたトーゴの棄権は、再びペンディングに(トーゴの第1試合は11日の月曜日)。CAN運営委員会のメンバー、コンスタン・オマリ氏は、やはり9日に、トーゴが棄権すれば、規則に記されている懲罰を受けることになる、と発言した。その規則とは、大会開始の20日前以降に棄権した代表は、5万ドル(約463万円)の罰金を科され、その後のアフリカ・ネーションズカップ2大会の出場権をはく奪される、というものだ。

 一方で、9日に選手団を母国に呼び戻したトーゴ政府は、スポークスマンのパスカル・ボジョナ氏を通じ、「われわれは、このような悲劇的状況下でアフリカ・ネーションズカップを続けることはできない。選手たちがショック状態にあるため、(選手召還)は必要不可欠なことだった」という声明を発表している。この言葉を大会棄権の意思表明と取る向きも多かった。

 しかし、欧州時間の夜半に、前述のロマオが「今、トーゴ代表のスタッフ、選手全員で話し合いを行い、最終的に、月曜日にガーナ戦を戦うためピッチに立とうということになった」と『レキップ』紙の現地記者に説明。今度は一転して、トーゴ代表は大会参加を決めたというニュースが流れたのである。

 いずれにせよ、この事件はアフリカのイメージに深い傷を残しそうだ。腕を撃たれ、一時「大会辞退をキャンセルすべき」と言っていたフランス人のブリュド監督は、アシスタントの死を知る前にRMCラジオの取材に答え、「アンゴラの軍隊(警備隊)のおかげで命を取り留めた。われわれは完全に無防備だったので、彼らがいてくれなければ、やつらはわれわれを皆殺しにし、わたしも、今こうしてここで君と話をしてはいなかったことだろう」と恐怖の経験を振り返った。

 大会運営組織とアフリカサッカー連盟は、トーゴ組織委員会に予告なく、強く推薦されていた飛行機ではなくバス移動したことについて、トーゴ協会に責任があると責めている。それについてブリュド監督は「不幸なことに、政治レベルで責任をなすりつけ合う事態になる危険がある。しかしそれらすべては、これから突きとめていかなければならないことだ」と語った。

-Kayako Kimura from France-

( 出典先:スポーツナビ
「皆が悲しみに暮れている。大会はもはやパーティーではないが、
われわれのナショナルカラー、真価、そして男であることを示したい」

出場決意が男前の真価です、トーゴ代表選手の皆様