mathichenの酔いどれ日記【Hatena版】

~midnight dribbler~(ウサギ畑でつかまえて)

【Hatena版】忘れられた遥かな時の彼方から語りかける歌声

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八月の濡れた砂、誰もいない海…時よ止まれ、君は美しい - 超時空なら…

どんだけ酷暑だろうと、立秋を過ぎた8月下旬に至れば、去り行く夏に哀愁を見出し、実りの秋が待ち遠しい

昨夜フラフラとYCCさん(元Yahoo!クラシックカテゴリさん)の所へ出かけ、改めて感じ入った

理由:「極上のワインと哀愁が似合う、大人のためのお伽話」

 

 

 

 

YCCさんブログ失業防止対策である「過去の旅行記シリーズ」、その第三弾、2002年春ドイツ編が完結を迎えた

ベルリン国立歌劇場→ボン→UCL準々決勝→バイエルン国立歌劇場が旅の目的であった

UCL準々決勝はバイヤー・レヴァークーゼンvsマンチェスター・ユナイテッドのみならず

一旦出国してスペインへ向かい

レアルマドリードvsFCバルセロナイベリア半島犬猿試合まで(裏山~)

マドリードを離れ再びドイツ入りし、ミュンヘン訪問で1ヶ月近い旅の終わりを迎えた

 

 

 

 

ミュンヘンと言えば、極悪非道KYバイエルン王国⚽を放置しても、作曲家リヒャルト・シュトラウス大先生の生誕地

バイエルン国立歌劇場とも縁が深い大先生の作品が聴けたらサイコーね

 

 

 

 

横道へ逸れると


R. シュトラウス:ばらの騎士 (C. クライバー, 1979年)【全曲・日本語字幕】

ミュンヘン五輪記念に製作されたオットー・シェンク演出にゃ国の威信を懸けカネ掛けた甲斐あって

 R. シュトラウス:ばらの騎士 (C. クライバー, 1994年)【全曲・日本語字幕】

大同小異のシェンク演出より舞台の奥行きが感じられる豪華版である

 

 

 

 

元の道へ戻ると

ばらの騎士、これは、モーツァルトフィガロの結婚を下敷きとした作品である

シュトラウス大先生は他に

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男と女、その苦悩と歓喜 - 映画、音楽、文学

影のない女魔笛、アラベラ=コシ・ファン・トウッテを書いている

台本担当は全て、モ-ツァルトのそれを遥かに凌ぐフーゴ・フォン・ホーフマンスタール

上の3作品がミュンヘンで聴けるんだったら、スルーする者は壮大なる田舎町ミュンヘン以下の田吾作であろう

 YCCさんはダ埼玉の浦和赤組応援団を除くと都会人なので、2002年春演目に『アラベラ』を見逃さなかった

 

 

 

 

バイエルン国立歌劇場『アラベラ』、人生半世紀以上のニッポン人にはまず↓かね


Arabella Act 3; Das war sehr gut, Mandryka - finale (Lucia Popp, Bernd Weikl)

Arabella Lucia Popp Berndt Weikl Julie Kaufmann Peter Seiffert Wolfgang Sawallisch LIVE

1988年日本初演時のNHK映像から幕切れ部分と全曲

ばらの騎士の小娘ゾフィーからおよそ10年で巨大化したルチア・ポップw

それでも可愛い50歳手前が映えるのはやはり、古典的舞台だからでしょ

 

 

 

 


Gundula Janowitz and Bernd Weikl - Arabella - happy end

 Arabella 1977 Complete

1977年の映画版で歌ったグンドゥラ・ヤノヴィッツ

適役ながらやや老け顔で行かず後家っぽく映るのが惜しいけど、古典的なシェンク演出に救われていると考える

17歳乙女を47歳BBAが歌い演じるみたいなのが、歌劇では当たり前だのクラッカー

スーパーモデル級美女が増えた現代とて、20歳の役だから20歳が歌わなくてはならないは通らない

現実主義が通れば、あまり若くして歌うと声壊すワーグナー作品、シュトラウスならサロメ辺りが成立しなくなる

普遍性持たない現代設定とかにしちゃうと、「虚構という真実」、それは言わないお約束が守られず、歌劇文化衰退リスクだよ

トランスジェンダー黙れと言いたかったりもする

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もっとも舞台はオーソドックスでも演出家のコンセプトが「それは違う」と思わせる例もあって

YCCさんの鑑賞した2002年ミュンヘン『アラベラ』、アンドレアス・ホモキ演出がそれだったよう

世の中、カネ金かねMoney

アラベラ一家が没落寸前なのもカネのせい

娘を玉の輿に乗せて嫁がせたいと企むのもカネ目当て

マンドリーカは所詮、成金

アラベラが成金で寡夫のマンドリーカの後妻になるを決めるのもやっぱカネ目当て

観ていて「やれやれ身も蓋も無いのぉ」

…確かにね

バイエルン国立歌劇場『アラベラ』には何しろ


Arabella Della Casa Fischer-Dieskau Rothenberger Keilberth Munich LIVE FILM

 1963年の名舞台が存在するし


Sister-Act: Arabella, "Aber der Richtige"

Aber der Richtige (理想の男性が存在するなら) - 歌の翼に

自分が金持ちと結婚することで夜逃げ寸前の一家困窮の脱出とわかっているが

まだ20歳そこらの娘ならば

「自分には現在の求婚者たちより相応しい男性がいるのでは」

「今日、街角から自分を見つめていた旅の御方が、求婚者だったらなぁ」

そして旅の御方が本当に求婚者だったから喜ぶのが自然だ

カネで買われて嫁入りをアラベラ自身が図るみたいな展開なんて、夢もヘッタクレもねーじゃん

 

 

 

 

つか、観客の夢を潰したに等しいアラベラというのガー↓


Cheryl Studer - I could have danced all night (2013)

この時より若いのに、同じく貫禄のあるマンドリーカと抱き合った時は、思わず「相撲かっ!」(YCCさん)

2002年ミュンヘン『アラベラ』配役に関する限り、超リアリストに走りたくなるw

忘れられた遥かな時の彼方から語りかける歌声 - 歌の翼に


Happy (ballad) by Senta Studer. Taken from the album "Happy"

ワーグナーさまよえるオランダ人』から名前付けられた娘が余程アラベラに似合う

(ちなみに、妹の名前は、『ローエングリン』からエルザ)

 

 

 

 

YCCさんがステューダーの姿を見たのはアラベラが最後とのこと

「やがて、いつの間にか檜舞台から姿を消して行った

峠を越した歌手の落ち目を図らずも目撃してしまうというのは、何とも寂しいし、辛い」

2002年にはまだ47歳のステューダーだから、飛ぶ鳥を落とす勢いの30年前を知る眼には凋落と映るの

 

 

 

 

歌劇『アラベラ』が、1860年ウィーンを舞台に時代の変遷を暗示する作品だしね

緩やかながらも斜陽の時期を迎えつつの貴族階級が、バルカン半島の新興階級と縁を結び、更に新しい世代が誕生する運びとなる

歌劇が初演された1933年7月1日といえば、鉤十字内閣成立していた

ドイツ、そして、数年後に併合されるオーストリアが破滅へと向かう

何とも暗ーい時代に、輝かしい二重帝国時代文化を偲ぶ作品が誕生した

もう二度と輝かしい時代を取り戻せなくても

その時代を知る者の義務として、後世へと遺そうとした執念の賜物ではあるが

しかめっ面しての固い話じゃなく、言わば「お祖母ちゃんが孫娘に語り聞かせる昔話」

男装を強いられていた妹ズデンカの片想い成就といい、乙女チックな要素が欠かせない作品なんだよね

…歌劇場を出れば覚める夢すらブチ壊した脂肪の塊とか、そりゃYCCさん御愁傷様に尽きるわw