mathichenの酔いどれ日記【Hatena版】

~midnight dribbler~(ウサギ畑でつかまえて)

金の儚さ、銀の優しさ

【太古のおにいさまたちへ…】(2012年12月29日)
「亭主族、嫁のパシリに大忙し?普段の心がけ悪いからだろっての
24時間働けますか?それはカワイソ
mathichenさん版ヤホーブックストアを臨時開店しました
アメブロ別荘用に作った画像の使い回しですけどさ




当記事と次の記事が、アメブロ記事そのまま(前記事と同じく、加筆修正メンドクサイため)
当記事のオリジナルは、2012-12-11 17:51:34投稿









この間、3年半、もおちょい長いか?、とにかく久しぶりに、2階の納戸を開けました
目的は、ウチの元料理番が意味不明な理由で納戸にしまい込んでいた、古い漫画入れてある段ボール箱
気力体力ないと見ただけで倒れること請け合いの汚納戸なので、なかなか出来ないでいたのですわ





おにいさまへ…は、池田理代子による日本の漫画作品。『週刊マーガレット』(集英社)にて、1974年12号から 39号まで掲載。互いに愛憎の念をむき出しにする上流階級の少女たちの姿を通して、上流階級の品格の欺瞞性や家柄や血統にこだわることの愚かさを主人公の 目を通して描写している。1991年にアニメ化されている。

あらすじ
高校受験を控えた中学生・御苑生奈々子は、進学教室で講師のアルバイトをしていた大学生の辺見武彦に「自分のおにいさまとなって、文通してほしい」と申し出る。武彦はこれに応じたことで、奈々子との文通を始める。

そ して、晴れて名門女子校・青蘭学園高等部に入学できた奈々子は、クラスメイト・信夫マリ子から、学園の特権組織で、選ばれた生徒のみが入会を許される社交 クラブ・ソロリティの存在を聞かされる。自分とは無縁の世界と思っていた奈々子だったが、なぜかソロリティ会長にして生徒会長・一の宮蕗子の推薦でソロリ ティへの入会を半ば強制される。そこで、奈々子は蕗子から寵愛を受けるが、嫉妬した生徒たちからの嫌がらせを受けてしまう。そんな彼女の心の支えは、彼女 に異常に執着するマリ子とソロリティの存在に反対する折原薫だった。さらに、全校生徒から「サン・ジュストさま」として憧れを一身に集めている朝霞れいも また、奈々子に対して公平な態度で接し、時にはちょっかいを出してくるのだった。

奈々子は、ハスキーボイスでクールな印象を与えるれいに 惹かれ、色々と身の回りの世話を見る等するようになるが、彼女の生活は予想以上に殺伐としたものだった。やがて、奈々子はれいが置かれた複雑な環境と武彦 と学園の関係を知ることになる。それは奈々子にとって衝撃的なものだった。そして、奈々子の周囲でさらに衝撃的な出来事が起こる。

Wikipediaおにいさまへ…より引用 )





1976年、小学5年生の時、原作(コミック全3巻)を読み、約20年後、NHK-BS再放送を全話観ました
BS視聴から約20年経った2012年現在
「この作品こそ、アタクシが軽蔑してやまない現代の有名私立お受験狂想曲、そのアレルギーの原因だ」
と気づいたので、改めて原作を読み直したかったのですよ
つまり、アレルギーは昨日今日でなく、小学校以来30数年物の筋金入りというワケ~




学園の特権組織で、選ばれた生徒のみが入会を許される社交クラブ・ソロリティ
米国の女子大生の社交グループを模したもの(参照:Wikipedia)ということは
An Invigorating Ride! - Larry Hagman and Candice Bergen
女優キャンディス・バーゲンのデビュー作‘グループ’(1966年)に登場するような名門女子大なんかにも?
家柄、財産、教養、容姿、人柄、健康が、上級生メンバーに審査される
蘭学園は、社長令嬢、大学教授令嬢、議員令嬢、大使令嬢などの上流階級が通うお嬢様学校だけあって
庶民が共働きしてまで豚児を入学させる名前だけの成金私立とは
何億光年離れた別世界のお話には違いない




…という風に考えていたのは、上流階級とは無縁な公立小学生の若気の至りでした
何がお嬢様学校だ。何が雲の上の女神様たちだ。庶民より何億光年も卑しいの何のって…




1学期の中間テスト成績発表後、ソロリティハウスで、1年生メンバーの仲矢が窮地に立たされた
仲矢だけが、学年上位50番以内成績が義務づけられるソロリティ規約に反するためだった
会長の蕗子は、除名処分では不名誉だから自主退会せよと申し渡す
数学0点は実力不足でなく、テスト日に体調不良が原因。仲矢は必死で期末テストでの挽回を訴えた
見かねた奈々子も、たった1回のテストで人間を判断しないで欲しいと嘆願
すると、蕗子は奈々子に、「ご立派なご意見ね。一体誰のおかげで、ソロリティに入れたとお思いなの」
それじゃ、自分は実力で入れたのではない?奈々子が問いかけるも、蕗子は口を閉ざし、話をはぐらかす




が、奈々子は後日、通学バスで乗り合わせた仲矢から
「わたし、ソロリティを辞める。ソロリティの体質についていけそうにないもの…
憧れていたの。選ばれた美しいおねえさまたち、きっとお人柄も女としての生き方も…
でも幻想だった。何か、とても冷たくて…とても醜くて…もう…いや…
この間、(奈々子が)かばってくれて嬉しかった。忘れないわ
本当言うとね、初めはあなたに反感を持っていたの…
だって…宮さまの命令で、あなたのソロリティ入り、最初から決まっていて…
上級生のおねえさまの噂話を聞いて…」




会長の一存で、つまり審査なしで、特権階級入りさせた
もう、これだけで蕗子の人柄疑わしいのに、奈々子を入会させる目的というのが…
「蕗子は辺見武彦を愛しており、辺見に近い女性を排除すべく、蕗子女王様の崇拝者に囲い込む」
ソロリティメンバー選考時、折原薫を指名したのも(薫は辞退した)、薫が辺見と相思相愛であるため
…蕗子の異母妹・朝霞れいが蕗子に指摘した通り、自分を卑しめる行為であり、頭痛がする…
ソロリティは、組織を正しく維持すべき内部者自身から崩壊し始めているのですな




ソロリティ外部でも、特権組織の存在が生徒たちの心を蝕んでいたのは、三咲綾の愚行に現れています
信夫マリ子と中等部以来の犬猿の仲で、外部入学の奈々子も目の敵
選考メンバーにすら選ばれなかった怒りから
ポルノ作家の父親を持つマリ子に、「可哀想だから知らないふりしてあげていたのよ」
大学教授の父親は継父、小料理屋で働いていた母親の私生児である奈々子にも、軽蔑のまなざし
マリ子に対しては、ゴシップ雑誌を投げ出して、「あなたもこれまでね」
マリ子の父親には愛人がおり(雑誌には、妻妾同居)、マリ子の母親とは離婚間近のよう
「寄付金出してくれる人いなくなったら、あなたなんかソロリティにいられなくなるものね」
…子供は親を選んで生まれたわけでないのに、弁護士の娘を鼻にかけて、どんだけ傲慢小娘よ?




苦悩の限界に達したマリ子が、カッターで綾に襲いかかり、手首を怪我させ
経緯はどうであれ不祥事であり、マリ子はソロリティ除名処分を受け(奈々子は、自主退会した)
生徒総会で、薫が以前から企んでいたらしい「ソロリティ廃止を要求いたします」、遂に賽は投げられ
まぁ綾の愚行は結果的には、ソロリティの運命を決める起爆剤にはなりましたがね




ソロリティの運命を書くと、蕗子の決断により、理事会の承認を得た後、青蘭学園から永遠に姿を消しました
蕗子のソロリティ絶対主義ぶりを思うと、己の傲慢さが招いた悲劇が一番の廃止理由でしょうか…




薫は廃止要求の理由として、「ソロリティは人身売買制度」を指摘しました
「やがて世間に高く買われていくために…
自分たちは特別高級品なのだと、他の人間とは違うのだと
そんなバカバカしい優越感のために、毎年毎年多くの新入生が争い傷つけ合うのです」
高い憧れは悪くない。選りぬかれたメンバーによるクラブも然り
だが、スポーツのように、己の才能や実力の成果によるものに限ります
家柄や財産など、親や先祖が築いたものに胡坐かいたのは虚栄の市であり、砂上の楼閣でしかない




選ばれざる生徒たちの多くも以前からソロリティの持つ欺瞞に気づいていたよう
薫とれいが始めた廃止署名運動は、蕗子の想像を超えた大きなものになりました
蕗子は、11歳の時、友だちの誕生日会で下座に座らされたことを許せないほど、非常に誇り高い少女
自分の大切なもの、プライドを他人に壊されることを許しません
それ故、ソロリティ廃止要求への怒りの矛先を、異母妹れいに向けました
「あなたがわたくしを憎むなんて全くお門違いよ。私生児のくせに…
妹として愛してもらえる、並みの人間として扱ってもらえる、本気で思っていたの?
わたくしがあなたをそばに置いておきたかったのはね、自分の優越感の道具に出来る人間が欲しかったからよ
あなたを見るたび、喜びと誇りでゾクゾクしたわよ
自分より劣った人間、自分より血の卑しい人間、一生そばに置いておきたいとさえ思ったわ」




れいは元々、生より死に目が向いた少女でしたが
蕗子の罵倒により何かがプツンと切れたのでしょう、睡眠薬過剰摂取して命を断ちました
この世を去るに当たり、気持ちの整理をつけたかったのか、奈々子を夜の公園に連れ出し
「この世で唯一人血を分けた、わたしの本当のおねえさま
蕗子さまはわたしの本当のおねえさま、あの方はご存知ないけど、異母姉妹なんかじゃない
生まれるとすぐに本家に引き取られていった、同じ母の血を引くわたしのおねえさま」




そう、蕗子自身、妾腹の子、彼女の言葉に従えば血の卑しい人間なんですよ
だが何も知らない蕗子にとって、信じていた父親に、母以外の女性がいた、しかも娘までいるのは
「そんな子を家に引き取るなら、そんな子を妹と呼ぶくらいなら
わたくしは死ぬわ。その方がずっとましよ」
れいが母と死別し本宅に引き取られることになった時の拒否反応と、れいを見る憎悪の目から
蕗子自身も妾腹の子である事実と合わせ、本来、絶対に知られてはならなかった墓場ネタでした




なお、アニメ版では、れいの死後、蕗子が奈々子にこれまた墓場ネタとして
「れいは知らなかったけれど、わたくしの本当の妹なのよ
(本宅の正妻で、蕗子を育てた)母が亡くなる際、教えられたの」
…姉妹でキツネとタヌキの化かし合いですか…
この設定の方が、蕗子の恐ろしさが強調されると思えますよ
だって、自分が血の卑しい人間を知りながら、同じ血の卑しい人間を蔑み、精神的虐待するんだもん
本当にプライド持つなら、同母姉妹を名乗らずとも、育ちは違えど…のれいに慈悲の心を見せるはずでしょ
れいの自殺を知り、「こんな仕打ちって…それでも愛しているのにー」と絶叫されてもねぇ、信じ難いわ




誇り高さなんて、謙虚さや慈悲の精神に裏付けされたものでなければ、何とも脆いものだと思いませんか
いくら財産あって、高い社会的地位買えるとしても、人間の中身薄ければ無意味
初めの方に書いた、『現代
の有名私立お受験狂想曲』にも奏でられていますよね