mathichenの酔いどれ日記【Hatena版】

~midnight dribbler~(ウサギ畑でつかまえて)

始まりの終わりか、終わりの始まりか、或いは?

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東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.6『ニーベルングの指環』第1日《ワルキューレ
文化会館シャンパンロゼ、1杯1700円…椿屋珈琲店1杯700円珈琲がコンビニ珈琲1杯100円に思えるじゃなくて
感想文をワーグナーの指定した役柄順に備忘録しとく(ひたすら長いのは、ワーグナー扱うせいにしとけ)



ジークムント(テナー):ロバート・ディーン・スミス

奴さん立ち位置とmathichenさん座席の関係で、アタシゃ何度、「やい、右へ寄れ!」と魂の叫びを発したやら
ジークリンデの方を向く後ろ姿、邪魔~。男の尻なんて見たかねえやい
一度、怨念が通じ、サッと横へ移動したので特別に赦す
第二幕第五場、フンディングとの決闘場面では、目の位置での大声にビックラこいた
1998年に大阪フェスティヴァルホールで聴いた第一幕第三場から、17年も経った。場数こなし、安定して当然か
幕間に地獄耳した、ジジババ客同士の感想述べ合い:「柔らかい感じで力強さは十分、最近珍しいヘルデンね」
ジジむさくもオッサン臭くもない、子供っぽさ残す青年に向くと言えよう

演出家ハリー・クプファーが、1988~1992年バイロイトでの♪ニーベルングの指環に於いて
細かい内容忘れたけど、「男のエゴが、世界の破滅を招く」と説明していたのを読んだ事ある
ヴォータンやジークフリートの破滅を思い起こすと、言えてる
ヴォータンは権力欲、己の野望が招いた身の破滅
その孫であるジークフリートは、祖父さんの隔世劣性遺伝
人の話を聞いてるようで何も聞かんオレ様の血を引いとるわ
その根拠として、以下の通り…

ジークムントも息子ジークフリートに先駆け、父ヴォータンによる遠隔操作育児を受けたものの
第二幕、死の告知場面に於いて
「ヴァルハラ城に行けば、ウェルゼ(ヴォータン)に逢えるのですか?」、見事なファザコンぶりを見せていたのに
「愛する妹ジークリンデと離れ離れになるくらいなら、ジークリンデの喜びと悲しみ持てる所なら」
どんな忌まわしい地上であろうとも残ると、ブリュンヒルデに断言し、実行しようとしたぜ
仮の話、ジークリンデと地上に残るが叶ったとして
ヴァルハラに行きゃ、英霊として出世叶うのを捨ててまで、愛する女性のため、どんな試練をも受け入れ戦う
YouTubeで歌ってるジェス・トーマスと並ぶ男前じゃねえか
…荒削りで、世間とズレてるが、少年が一気に男へと成長するに相応しい。スミスに言えね?



フンディング(バス):シム・インスン

韓国男子って何故、目が可愛い?+バス歌手多い?
何歳くらいだろ。比較的若いよね
アタシと同世代、50歳辺りのヨン・クヮンチュルが既に、1940年代後半生まれのフィリップ・カンと一線を画す
韓国系独特の強い声ながらも、アジアの範疇を越える
韓国からの米国移民が他からの移民と異なり、母国で食い詰めじゃなく、教育熱心な中流以上が主であるように
シムも、学生段階に欧州へ渡れたのかしらね

敵役フンディングにしては、明るい声
太古の大橋国一ほどじゃねえだろけどさ(♪ラインの黄金ヴォータン他、靴屋日本初演で歌ったと書けば?)
フィンランドの白熊、カラヤン盤のマルッティ・タルヴェラを何となく思い出した
フンディングが敵役と言っても、悪事も働くが、世間には豪族の主として名を馳せ、それ相応の風格を備える
飛んで火に入る宿敵ジークムントに、一夜の宿を与え身の安全保証を見ての通り
THE悪を何が何でも前面に押し出す必要は無い
紳士とワルとの塩梅が難しい役柄だが、シムには年齢と経験を重ねるにつれ、適役になる見込み大と思う



ヴォータン(バス=バリトン):エギルス・シリンス

何とかしてよッ、「リヴァプールFC主将に、赤い悪魔を没落させたモイモイを足して割った顔」
オリヴァー・カーン彷彿させる猿顔でもある
カーンのご先祖様と同じく、ラトヴィア人。典型的なバルト三国顔にゃ違いない

「バス=バリトンの役も歌えるが、本質的にはバスでしょ
実際、持ち役の一つである魔法使いクリングゾールの方が合う暗めの音色なんじゃないの」
昨秋、新国立劇場パルジファルで歌ったアンフォルタス王を聴いた感想ね
ハンス・ホッターに代表される神さんらしい神さんを好む向きには物足りない
悩める宿六タイプ嫌いじゃない向きには自分と等身大悪くない
1961年生まれ。50代半ばの現在が、ヴォータン歌い頃の円熟期であろう

「Steh'! Brünnhild'!(逃げる気か!?ブリュンヒルデ ! )
第三幕での文字通り雷親父場面、これもmathichenさんの目の位置でさ、再度ビックラこいた
欲言うならば、第二幕幕切れ、フンディングへの「Geh'! - Geh'! (去るがいい…!去れ!)
二度目のGeh'!をさ、抑え気味にやってくんない?
息子の落命は恐らく、危機に訪れた父親を見て勇気湧いたのに「何故?」、無言で答えの無い質問後だ
息子を見捨てねばならない理不尽と怒り、絶望を、ヴォータン自身が一番感じてるんだから
娘に八つ当たりっぽい第三幕との対比として、怒鳴る気力も出ませんわ的にやって欲しいわけよ
ヴォータン再度聴く機会ある予感する。宿題出しとく



ジークリンデ(一応、ソプラノ):ヴァルトラウト・マイアー

2002年ベルリン国立歌劇場日本公演から、13年も経った。ワーグナー実演はもお聴けねえよなと諦めてた
いま一度、ジークリンデ聴ける日が訪れるとは。長生きはするもんだ(シミジミ実感中)
時計の針逆回し出来ない。経年劣化により声苦しい箇所が散見された。が、んなもん許容範囲だスルーじゃ
PCから30cm離れると文字解読困難、都合イイ時だけ遠視になるド近眼のmathichenさんだもんで
30m離れた美女に感動したのは説明までもあるまい

第二幕、ジークムントとジークリンデの逃避行場面
思い起こせば、13年前もここで泣いちまったのよね
熱病に浮かされてだっけ、精神的混乱をきたしているジークリンデ
不本意ながらも一度はフンディングに従い、罪悪感が蝕み、ジークムントから離れようとする
同時に
「du fällst - in Stücken zerstaucht das Schwert:(倒された…剣もバラバラ…)
die Esche stürzt, es bricht der Stamm!(トネリコが崩れ落ち…幹が割れる!)
Bruder! Mein Bruder! Siegmund - ha! -(お兄さん!あたしの大切なお兄さん!ジークムント…ああ!…)」
お先真っ暗を見通してしまい絶望、でも取り敢えず現在のジークムント無事を確認し、眠りにつく
…シェロー演出のジャニーヌ・アルトマイアー以上に泣かせたわ
アルトマイアーといやぁ
https://www.youtube.com/watch?v=ixIVOOgyz8E
「Kehrte der Vater nur heim!(お父さんさえ帰ってきてくれたら !)
Mit dem Knaben noch weilt er im Wald.(まだお兄さんと森の中にいるんだわ)」
第一幕の歌詞に
「Deines Auges Glut erglänzte mir schon:(あなたの目に燃える炎を見るのも初めてじゃないわ)
so blickte der Greis grüssend auf mich,(これは、あの老人が私を親しげに見つめ)
als der Traurigen Trost er gab.(悲しんでいた私を慰めてくれた時に見た眼差し)
An dem Blick erkannt' ihn sein Kind -(そのおかげで、私はあの老人の子だと気付いた…)」
帽子を目深に被って、片目を隠す、青い衣装を身に纏った白髪の老人=ヴォータン
はい、ご希望通り、お父様は再登場した
再登場したが、お兄ちゃんの霊剣を砕き、見殺しにしてしまった
この場面での、昨日のマイアーおねえさん、意味わからずポカンとした表情と、意味を理解後の絶望感たるや
…書き出すと六法全書並みに長くなる。収拾つかなくなる。この辺で抑えとく



ブリュンヒルデ(ソプラノ):キャサリン・フォスター

フォスターは英国人。でも見た目、米国産牛すら逃げ出す大女タイプ
数十kg大減量熱中時代のデボラ・ヴォイト彷彿させる顔立ちのせいか
顔だけ見ると、美人の部類に入る

ブリュンヒルデ役も父親と同じく、聴き手の好み分かれると思う
女神様系を望む向きには、太古のビルギット・ニルソンでないと物足りず、誰が来ても難癖
mathichenさんはシェロー演出のギネス・ジョーンズが好きなので、どっか抜けたお子様っぽいOKでやんす
https://www.youtube.com/watch?v=B0NYqiEysqA
ブリュンヒルデって初登場時、ま~親父とキャ~♪キャ~☆じゃれ合う小娘であり、構わないんじゃね?
小娘なればこその、成長物語でもある
神々の価値観で育ったが、ジークムントとのやりとリから一気に、未知の世界へ飛び出すと言えるでしょ
小娘系ならば、1967年日本初演で歌ったアニヤ・シリヤが最強
モデルばり痩身の27歳、若々しい娘声、あれに勝てるものは空前絶後に決まってる

英国系歌手というのは男女とも割合、日本に於いて過小評価される?
英国音楽界が「クラシック音楽の本場じゃない」みたいな過小評価されてるというか
常設歌劇場少なく、巡業カンパニー多いのは確か。しかし巡業が、実は侮れないのにね
巡業を主に行う必須条件として、「移動に負担かからないコンパクトな舞台装置」
シンプルな舞台となると必然的に、演劇性が高まる
美男美女でなくたって、突っ立って歌う大根役者ではやって行けないのよ
また、英国でもイングランド人の場合、日本人に通じる引っ込み思案克服が課題
表現意欲を引き出す演劇訓練無いと、大仰なオペラ歌手としての立身出世は厳しい

フォスターも舞台上の動き悪くない。現代風演出にも耐えられると見る
個性的な声じゃないものの、透明感あって、R・シュトラウスにも適する
一昨年からのバイロイト出演がきっかけとなって、極東での評価上がればよろしいですな



フリッカ(メゾ・ソプラノ):エリーザベト・クールマン 

一瞬、ソプラノかと思った
ドイツ語版Wikipediaによれば、2004年までソプラノだったとか。納得
1973年生まれ。イイわね。フリッカ役が、若過ぎても婆でも向かない役だからよ

指環全曲を聴き通さないとわかりづらい点に、「♪ワルキューレ第二幕第二場が、分岐点」
神さん夫婦喧嘩が、世界の明暗分けたと言えるのでは?
倦怠期ながらお互い未練タラタラ、それなりに愛情見られた♪ラインの黄金は遠い過去
いまじゃ年がら年中夫婦喧嘩で、ヴォ-タンは帰宅拒否症的のよう
ただフリッカは、結婚の守護女神。フンディング同様、世間の常識側
双子の兄妹が駆け落ち、それも自分の亭主が他所でこしらえた子供たちがなんて
嫁の忍耐にも限界あるってもんだ、バカ亭主への復讐も兼ねたくなるわい
特権階級の永遠性を疑いもしない、要するに想像力持たず、世界の滅亡云々など寝言だし
「男は大局的、女は近視眼的」の視点変えれば、「男は足元見ていない(嫁が一番の敵を忘れてる)」だし
潔白な者だけが罪を裁けるという考えには異論だが、他はいちいいち正論で、宿六の勝てる道理無い

生身のオンナ忘れた婆じゃ務まらない役の意味おわかり?
クールマンの演技ちょい大袈裟、真綿でジワジワ相手の首絞める言葉責めがよほど効果大
でもま、ホッホッホッ♪☆と凱歌上げるくらいの感じが、フリッカの敗北を伝えられるかしらん
フリッカの敗北とは?:「亭主を完全に追い込んでしまい、夫婦破鏡が決定的になった」
嫁の立場上、家庭内離婚ね。ヴォータンがさすらい人になる=帰宅拒否症通り越し、同居拒否



8人のワルキューレ娘たち(ソプラノ、メゾ・ソプラノ、アルト)

日本人歌手勢の出来に凸凹は無かった
演技面は今後、マイアーおねえさん他と同じ舞台に立てた経験から学びましょね
日本人歌手の演技水準も上がり、意味不明なお手々パタパタはほとんど無くなった
が、「オペラも、演劇の一つ」の考えが、どれだけ浸透してるか?
舞台装置に頼らない演奏会形式こそ、聴衆を惹きつけられるか、持てる演技力が勝負
舞台の形式抜きに、自分が歌う場面以外の全てに意識集中するのが、演技者の基本中の基本
お忘れなくメモメモ



マレク・ヤノフスキ指揮NHK交響楽団

NHKって、元ウィーン・フィル首席のライナー・キュッヒル招聘出来るだけの受信料ボッタクリは置いといて
N響が想像以上に上手いのは、一昨年の♪ニュルンベルクのマイスタージンガーでわかった
今回は、指揮に関心持った
ディジタル録音初の指環となった、旧東ドイツ時代のドレスデン盤を振ったヤノフスキ
愛想も色気もヘッタクレも無い、面白みに欠ける指環であった
武骨というのかしらね、現在も同じ
30余年前から見れば、少しは甘美さ加わったかと。弛緩する所無いのは立派である
来年、キリル・ペトレンコに替わって、バイロイトの指環指揮するとの事
1939年生まれ、堂々たる後期高齢者にしてようやっと、聖地からお座敷かかりましたか
ケッタイな演出を目にして脳出血起こさないを祈っとく




記事題名の理由:「まず、↓を参照」




ワルキューレ、ひいては♪二-ベルングの指環全体に関わる、神さん父娘の謎まで解けてしもた
ヴォータンと智慧の女神エルダの間に生まれた、ヴォータン最愛の娘ブリュンヒルデ
彼女を文字通り『ヴォータンの娘』と解釈するせいで、神々の終焉に繋がる本質が見えなくなる
ブリュンヒルデを、『ヴォータンの花嫁』と解釈すれば、謎は一気に氷解する
フリッカだって亭主に言ってるじゃん、ブリュンヒルデが「あなたの望みの花嫁である」ってさ
娘を花嫁にかい?駆け落ちする兄妹の親父やぞ。恐ろしか正妻おらなんだら、とうの昔に手を出しとるわ
米国の心理学者の著書に、ピグマリオン・コンプレックスの一例として挙げられてるんだけど
説明はアタクシには難しいので書かない、ただまるっきり的外れではないと思う
ブリュンヒルデはヴォータンの意志を表現する媒体であり、娘が意志持つを認められない
娘の訴えを反逆と取るのは、言わば自己否定に走るに等しい
ヴォータンは我欲に呪縛され、ブリュンヒルデはヴォータンに呪縛され、世界の破滅を招くのよね

( 2014年7月20日【復讐するは我に在り】より )




フリッカ感想部分に、「♪ワルキューレ第二幕第二場が、分岐点」
神さん夫婦喧嘩が、世界の明暗分けたと言えるのでは?と書いた
ジークムントが果たして、ヴォータンの目論見通り、世界を救うかはさておき
「純粋なる愛による、世界の救済。旧態依然とした価値観の手に負えない強い力だけが、救済をもたらす」
秩序守るべき神さんが、♪ラインの黄金での横紙破りした後始末するには
兄妹駆け落ちさせるくらいの、これまた横紙破りなんじゃない?
だとすれば、ジークムント見殺しを決める時点で、世界の滅亡ひいては神々の黄昏が決まったと言える




一方では、「どうあがいたって、神々の黄昏は回避出来なかった」
ジークフリート第三幕
さすらい人(ヴォータン)が智慧の女神エルダを訪れる場面
え~と、ヴォータンさん、♪ラインの黄金で、神々の終焉を警告され
その後、エルダの元へ押しかけ、終焉の詳細を強引に聞き出し
男女がナニかする結果として、娘ブリュンヒルデお土産に持ち帰り
それ以来の顔合わせですかね?
ともかく、ヴォータンはエルダの変わりように驚いた
エルダに言わせれば、愛情を盾に迫られ、智慧が乱されたとか
何かね、すっかり世帯やつれして厚化粧も無駄な古女房の感じ
見た目はどうあれ、頭まで悪くなっちゃマズイでしょ
ヴォータンには期待外れ。で、「寝とけ」と言われ、また寝ちゃう
ところで、♪ジークフリート幕切れ
ブリュンヒルデ目覚めの場面、これは見た目ハッピーエンド
魔の炎に保護されて眠っていたブリュンヒルデ
果報は寝て待て、お待ちかねのジークフリート登場により起こされる
これ、mathichenさんの解釈では、お下品な表現で書けば、「ヤらせろ」「イヤよ」の展開とあって
権力者や体育会系の男に押し切られるのってさ
ブリュンヒルデは、母親と同じ道を歩んでいるに過ぎない
彼女は彼に智慧を吸い取られ、男に支配される女に成り下がる」




…昨日の疲れがドッと出て、何言ってんだか自分自身意味不明。彷徨える答えの無い質問状態だけど
ヴォータンが若い世代に希望託して終わる物語でなく、希望に告別する物語の気がしてならないのよね…




なお、東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.7『ニーベルングの指環』第2日《ジークフリート》について
mathichenさんが♪ジークフリート聴くと、地震発生率高くなる
近年、どちら様も地震怖いだろ。来年は行きま宣言!(天変地異以上に、自分が死ぬのが怖いのも大きい)