mathichenの酔いどれ日記【Hatena版】

~midnight dribbler~(ウサギ畑でつかまえて)

【意味怖】意味がわからなくなりつつある、家族の在り方

今日読んだ最新の、意味がわかると怖い話より




【意味怖】謝りたい

私と妻は明日で結婚40年を迎える。

子宝にも恵まれ
とても良い妻で私をいつも支えてくれていた。

頑固な父の先のない闘病生活にも
最後まで付き合ってくれた。

最近では少しづつ認知症の出てきた母とも
上手に同居してきてくれていた。

こんなど田舎に家を建てることを許してくれた。

子供たちも巣立ち落ち着いたことだし、
私は日ごろの感謝をこめ、
妻を2泊3日の旅行に招待した。

出発は今日20時の飛行機だ。

遅い出発だが仕方がない。

母の夕飯を作らずに家を出るわけにはいかない。

明日の昼過ぎにはヘルパーも来る。

母の朝ごはんにおにぎりを握って行くとしよう。

お茶も沸かして置かないと母が不敏だなと思い
やかんに火をつける。

全く、息子たちもこんなときぐらい協力して欲しいものだ。

「あなた、そろそろ出ないと間に合わないわよ」

妻の声で時計をみた。

なるほど、これは急がないといけない。

私は急いで準備をした。

紳士たるものみだしなみには気を抜けない。

私は母に挨拶をして家をでた。

翌日の昼過ぎ、旅先でヘルパーから電話がなった。

私は帰る家と最愛の母を失った。

母にはあれほど台所にたつなと言っていたのに…。

そして数日後、私は妻を残し母に会いに行った。

https://imikowa.com/entry/2018/11/24/%E3%80%90%E6%84%8F%E5%91%B3%E6%80%96%E3%80%91%E8%AC%9D%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%84


 

【解説】
「家を火事で失い、最愛の母も死んでしまった
語り手は、母に台所に立つなと念を押していたのにと、最初は母のせいだと思っていたが
実際の火事原因は、やかんに火をつけたまま出かけた語り手だった
『台所に立つな』という言葉を忠実に守った結果、母親は死んでしまい
その事に気づいた語り手は、母を追い、自ら命を絶つ」

 
 

この意味怖、まず、いたたまれない思いに駆られる
そして、徐々に、火事とその背景について、強いて挙げるならの『真犯人』が見えて来る




語り手の不注意は事実である
外野の目には、ジジババ、それもボケ進行中を置いて、夫婦旅行する息子夫婦が糞と映るであろう





結婚40年の夫婦という事は、25歳同士で結婚したと計算して、高齢者デビューしている
夫の父親を看取り、認知症出て来た母親と同居
妻はずっと専業主婦か、舅の闘病生活を機に退職してと思われる
年齢的に、老老介護の域に達している
夫がどれだけ介護に関与したかわからないものの、妻の苦労に感謝しており
内助の功への慰労を込め、母親介護続行中ながら、妻の骨休めとするささやかなプレゼントを用意した




夜遅くから、明日の昼過ぎにヘルパー来るまで、母親一人でお留守番状態となる
これは、母親がまだらボケ的段階で、指示すれば自分で身辺の事出来るを意味する
息子夫婦と同居であるため、介護認定下りていても、要支援辺りの薄っい受給サーヴィスのみの軽度者
ヘルパーというのは多分、公的なものじゃなく、民間からの派遣だ
利用料お高く日常的には無理だが、息子がピンポイントだったら利用出来る高い経済力を有している
自力で動ける母親、短時間だが家事サーヴィスと見守りが入るなら、息子夫婦の旅行にそう気兼ね要るまい
2泊3日の小旅行くらい認められていいじゃないの




ところで
語り手が、「全く、息子たちもこんなときぐらい協力して欲しいものだ。」
結婚40年夫婦の息子たちだと、30何歳から25歳くらいまでと、堂々たるおっさんである
複数人いる子供たちだから、堂々たるオバハン娘も含まれる?
既に結婚しているにせよ、まだ独身貴族にせよ、多忙だろうが、毎日実家に通って介護しろという話じゃ無し
親戚が忘れた頃に介護手伝いに来て、ドンクサイため却って迷惑というケース聞かれるけど
2,3日の見守り程度だったら、高校生や大学生と年齢高い子供にだってどうにかこうにか務まる
子供たちの誰か実家に泊まって祖母ちゃんの世話するは考えられなかったのか
語り手も、息子たちに祖母ちゃんの世話を打診したに違いない




しかしながら
「全く、息子たちもこんなときぐらい協力して欲しいものだ。」
打診したら断られたという憤りの感情を吐露する印象受けるのよ
どうしても抜けられない予定とか納得行く理由じゃなく、メンドクセ~が見え隠れする口実でね
ひょっとすると、介護家庭が遊びに行くなんて恥晒しで言語道断くらい言われたかも




父親にすれば、「そう言う自分たちは、何様だ?」
新しい実家訪れた事あるかは置き
大学時代も、独身貴族時代も、嫁(婿)や孫ちゃん連れでも、前の実家には何度も足を運んでいよう
少なくとも、年末年始、GW、盆休みに、帰省しているはずだ
舅姑に手の掛かる息子たちの母親が都合つけて、孫ちゃん預かったりしているも考えられる




何にせよ、息子たちにとって、お客様感覚での実家への甘えが見て取れたと踏んだ
お客様感覚ならば、用事とか言いつけるなよなと上から目線の空気や物言いが不思議じゃない
両親揃って打診した場合
「子供といえど、我々にも独立した大人の生活があるんだ」
「家の事は、主婦であるお母さんの仕事じゃないか」
「介護なんて家族だから出来て当たり前で、大変とか言い訳するな」
「お祖母ちゃんとの同居が嫌だったら、サッサと別居していればいいものを」
「お父さんが頑張って働くおかげで、外で働く苦労知らない気楽な身分のくせに」
「お父さんと二人で旅行なんて、お祖母ちゃん可哀想でしょ」
「旅行はいますぐじゃなくても出来る事なのよ」
「お祖母ちゃんが許しても、非常識であり無責任だよ、世間から笑われるぞ」
一見もっともらしい言葉で、自立心持っていない寄生虫の母親をハイ!論破したという胸糞もね




夫が妻を残して母親を追うというのが、語り手最大の落ち度かしら
認知症を一人置いて旅行中に、火事発生し、家と認知症が犠牲となった
子供たちから直接罵倒されなくたって、軽蔑の目と冷たい空気に、夫婦の肩身は狭くなる
子供たちだけでなく、親戚中から絶縁される可能性もある
苦労を引き受け頑張ったのに評価されず報われない妻が一人残れば?
心を病んでしまい適当な施設に放り込まれ、実質的な姥捨て山
あるいは、居場所無くした妻が絶望し、夫の後を追う
どっちかでしょね




火事とその背景について、強いて挙げるならの『真犯人』、もう説明不要よね
この意味怖で一番怖い点:「現実世界でいくらでも起き得るリアル感」