mathichenの酔いどれ日記【Hatena版】

~midnight dribbler~(ウサギ畑でつかまえて)

長い幸福への練習曲(前篇)

では、Yahoo!ブログで更新する事に意義がある記事へ





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柚木章子は都立第1高校に通う16歳で、両親の愛情に包まれ平凡ながらも青春を謳歌する日々
しかし突然襲った自動車事故により、両親を亡くしてしまう
父のわき見運転が原因と加害者側であるため、親戚から厄介者扱いに抵抗
父の仕事仲間である建築会社社長・桐島の家で女中として働きながら学校に通い始めた
桐島の娘・麻由子は17歳、私立高校女子部2年生で、章子を都合良く扱う気まぐれ屋
大学4回生の息子・薫は何故か章子に厳しい
どんなに辛くても笑顔でいようと誓う章子に、薫の親友・小嶺が優しくしてくれ、章子は恋心を覚える
小嶺からラブレターが届き、有頂天になったほどだった
しかし、小嶺は章子の同級生・野瀬百合子の異母姉に当たる中原真弓と婚約中
手紙は誰かのイタズラとわかり、章子はあっさり諦めた
実の所、小嶺が本当に愛する女性は、真弓から憎まれる百合子だった
許されない恋に絶望した小嶺と百合子は冬の山に入り心中を遂げた
それぞれの友人を失う薫と章子に、大きな変化が訪れる




薫が章子に厳しく接した背景には、渡冴子の存在があった
薫や小嶺の同級生で、男子学生にかしずかれる、美しくて知性的で派手好みの冴子
寡黙な仏頂面の薫が射止めたとは、珍妙な組み合わせながらも結構上手く行っていたという
そんな頃、冴子の境遇が一転し、彼女はある金持ち男の囲われ者となり薫を捨てた
女王は困窮の身に落ちても、いつも最高級のバラでいなくては我慢ならない
自室に冴子の写真を飾るほどの薫の傷心は深かった
父親の事業の借金だけが残る母子家庭の原因となった自動車事故を恨んだ
そう、冴子こそ、章子の父が起こした事故被害者の娘だった
被害者側であるのに分不相応な贅好みを維持するべく、囲われ者と安易な道を選んだ冴子
自分の不幸に気を取られ未熟ながら、自力で這い上がろうと、雇われの道を選んだ章子
薫は当初、冴子の堕落ぶりを見たせいで、章子も「すぐ音を上げる」と見くびっていた
しかし予想に反し、章子はへこたれない
「冴子と章子どちらも親を失ったのは同じ。何故こうも、選んだ道が違うのだ」
薫は自分が間違っていたのだろうかと、徐々に軟化していった
そして薫は辛い境遇でも乗り越えようとする健気な章子に徐々に魅かれて行き、結婚を申し込む
薫が桐島建築の業績不振を救う見合い話を蹴り、章子は学校始まって以来初の奥様高校生となった




後篇へと続く