mathichenの酔いどれ日記【Hatena版】

~midnight dribbler~(ウサギ畑でつかまえて)

白と黒の織り成す人間革命

副題:【救済を。哀れなる人々に!(Wohlan, so helfet ! Helft den Armen !)】




grunerwaldさんへの返信を考えるうち、【赦されざる者への人間愛】への追記したくなった
正確に書くと、「月曜日の更新時、頭にあったのに、東京トンボ帰りの寝ボケ気味で書き忘れた」
記事が長いため、追記を新投稿する(そーすりゃ、こちらも長くなったって構わんじゃ~ん)
ちなみに、本日用記事もあり、当記事の17分後に登場する





FIDELIO (15) "Euch werde Lohn in besser'n Welten" Ludwig Greindl King (左)
FIDELIO (16) "Er sterbe !" Ludwig King Berry Greindl (右)
Fidelio
Act 2

Christa Ludwig Leonore
James King Florestan
Walter Berry Don Pizarro
William Dooley Don Fernando
Joseph Greindl Rocco
Lisa Otto Marzelline
Martin Vantin Jaquino

Arthur Rother
Chor und Orchester der Deutschen Oper Berlin
1963




ベルリン・ドイツ・オペラ1963年日本公演の半年ほど前に地元で収録された映像より
指揮者、ドン・ピツァロ、ヤッキーノが異なる
この映像でピツァロ演唱するヴァルター・ベリー、当時、レオノーレ役のクリスタ・ルートヴィヒの旦那さん
…ベリーさんの嫁がジェームズ・キング指して「彼の嫁だ!」、そりゃ男どもは「マジ!?」…置いといて
あっと、一つ付け加えると
女のレオノーレが拳銃を用意してるのに、男のピツァロは短剣いうのって、ちとオカシクね?
男が男をブッ殺したるいうんだったら、餓死しかけの弱った相手とはいえ、もうちょい有効な凶器を用意しとけ
ちなみに、餓死しかけのフロレスタン、素顔は米国の保安官出身~




一滴でいいから飲み物が欲しいと乞うフロレスタンに、ロッコフィデリオに飲み物をやるように言う
フロレスタンはレオノーレに気づかないが、彼は「彼女が天国で報われるだろう」
彼女は、彼にパンの皮を与えさせてくれと願い出て、ロッコが許可し、フロレスタンはそれを食べる
ロッコは命令に従ってピツァロのために警報を鳴らし、現れたピツァロは準備が整ったか尋ねる
ロッコはそうだと言い、フィデリオに立ち去るように命じる
しかしフィデリオは、物陰に隠れる
ピツァロはフロレスタンに、彼の殺人を告発したのは自分だと明かす
ピツァロが短剣を振り回すと、フィデリオが物陰から飛び出してピツァロとフロレスタンの間に立つ
「彼を殺すなら、その前に、妻の自分を殺せ!」
ピツァロにすれば一石二鳥であるが、レオノーレが拳銃を取り出したのを見て、思わずひるむ
ちょうどその時、大臣の来訪を知らせるトランペットが聞こえる
兵隊を伴ったヤッキーノが現れ、大臣が門で待っていると告げる
ロッコは兵隊たちに、ピツァロに供して上に行くように話す
ピツァロが復讐を誓うのに対して、フロレスタン夫妻は勝利の歌を歌い、ロッコは今後の成り行きを恐れる




…白と黒、黒と白が、釈然としないよね?
ピツァロとフロレスタンの過去の経緯はさておいても…




From a 2000 production of Beethoven's Fidelio at the Met.
Falk Struckmann (Don Pizzaro)
René Pape (Rocco),
Karita Mattila (Leonore)
Jürgen Flimm, production
James Levine, conductor.




ピツァロは大臣の到着の時にトランペットを鳴らすように命令する
彼はロッコに金貨を渡し、フロレスタンを殺すように言うが、ロッコは断る
ピツァロは認める代わり、牢獄内の古井戸の中に墓穴を掘るように命令する
墓穴が出来たらロッコは音を出して知らせ、ピツァロは偶然を装って牢獄に入って自分でフロレスタンを殺す、と




Fidelio, Finale
Performer :
Leonore -- Gabriela Beňačková
Florestan -- Josef Protschka
Jacquino -- Neill Archer
Marzelline -- Marie McLaughlin
Rocco -- Robert Lloyd
Don Pizarro -- Monte Pederson
Don Fernando -- Hans Tschammer

Royal Opera Chorus
Royal Opera House Orchestra
Christoph von Dohnányi, conductor
1990



ロッコは、レオノーレが自分の夫を助けるために、変装してフィデリオとして働いてきた事を説明する
ロッコはピツァロの殺人計画を話し、ピツァロは牢獄へ入れられる




…フロレスタン殺害計画による罪を問われるのは当然として
ピツァロに弁明すら許さない大臣と民衆、何様よ?
2000年のニューヨーク演出に於いては、ピツァロがリンチ受けた姿で最終場面に現れたのを見て
何となく、1989年クリスマスの夕刊一面、公開処刑されたチャウシェスク夫妻の写真思い出したわ
ドン・フェルナンドがフロレスタンの友人で、「友の敵は、己の敵」、これはわかる
「餓死を待つよりは、一突きされて死ぬのが幸せだ」
ロッコ、金貨受け取りと自らの手を汚すは断ったといったって、ピツァロに加担した事には変わりないだろ
フロレスタンに続いて殺されるにせよ、保身あるが、牢番のくせに囚人を見殺しにしようとしたんだからな




墓穴の用意出来たロッコがピツァロに合図を送る前、レオノーレがフロレスタンに
「何が起こったとしても、どうか神の思し召しだという事をお忘れなく
そう、何が起こったって、神の思し召しなのです」
彼女が独り、「おお神よ、我に勇気と力を与え給え」と合わせると
無論、夫を何としても救い出す決意表明である




と同時に
それまで数ヶ月間、刑務所の劣悪な環境を見てきたながらも
地下牢の想像を絶する酷い環境、息絶え絶えに近い囚人を目の当たりにして、強い衝撃を受け
「あなたが誰であろうとも、救い出します」
自分の夫でなかろうが、「赤の他人にも、彼を待つ家族や友人いる」に思いを馳せたとは?




夫婦愛から無意識のうちに一気に人間愛へ昇華したというか
レオノーレの決意表明が無ければ、この歌劇、アタシゃ糞決定し、一視聴後ゴミ箱に放り込む代物よ
一見まともに見える人間の中の愚かしさをあぶり出す教訓劇としての存在は許すけどね